このよをたつまえ
2013.03
インスタレーション（岐阜県美術館 県民ギャラリー）
カーテンレース・糸・ボーン・ガラス玉・ビニールチューブ・光 他
この数年の間に、あと少しで三桁に届く年齢の祖母二人を見送った。
祖母たちは老いて衰えていくうちに、生きるために何十年もの間当たり前のように使ってきたものを、何年かの長い時間をかけてひとつひとつ手放していった。「新しく記憶すること」、「歩くこと」、「食べること」、「内蔵を動かすこと」……命が生まれた瞬間から身に付け覚え続けてきた道を逆へ辿るように。やがて行き着いた病院のベッドでは「寝たきり」となり、意識は無くなったように見え、ひたすら一本の点滴で呼吸と鼓動をつなぎとめるような日が続いた。
生物が死へ向かう道に踏み入った時、身体が死ぬ準備をすすめていくという。植物が水を吸い上げなくなった時、茎の中が枯れて空洞になるすがたと重ねた。
